キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「ほんとに?ほんとにそう思う?」
安堂くんはあたしの頭に手を乗せたまま、言葉を続けた。
「けっこー俺、分かりやすいことしてたと思うんだけど」
そう言って、指折り数える。
「昼休み、ベントー食べ終わってからも屋上にいたでしょー」
「だ、だってあれは本、読んでたじゃん…っ」
「わざわざ寒いとこで読まないでしょ。フツー」
あたしの異議申し立てにもさらりと解答。
「尾行してきた小林をわざわざ待ってたり…」
「やっぱり気付いてたの!?」
「小林の必死な顔したかくれんぼ、面白かった」
フッと鼻で笑う。
「わざわざ、制服のボタンあげたり…」
「あれは何かのお詫びだって…!」
「そーそー。帰り際、勝手にキスしたお詫び。……ほら、キスだってしてんだし」
「~~~~っ!!!」
聞いてるあたしが恥ずかしくなった。
それでも安堂くんは平然としている。
「それに春休み。どうして毎日、誘ってたんだと思う?」
どうしてあたしの方が、頬を染めなきゃいけないのよ。
なんで安堂くんの方が、そんなにひょうひょうと…っ。
「だ、だったら何で、何も言ってくれなかったの!?」
赤らむ顔を拭って、視線を逸らして訊ねた。
今までひょうひょうとしていた安堂くんが小さく視線を逃がした。
「…それは……」
そこで言葉を切って、あたしと向き合う。
その瞳は凛として、…真っ直ぐな、いつもの安堂くんの瞳だった。
「小林がどういう理由で傍にいてくれているのか、分からなかったから」
強い視線で、少し怒ったような。
だけど1番似合う言葉は、その瞳は泣いている、そんな風に思えた―――。
「始まりが“脅し”だったから、小林は仕方なく俺の“お願い”を聞いてるのかな、って。それに、小林は――…」
その横顔が寂しそうで悲しそうで、あたしは見ていられなくなった。
「そ、そんなこと途中から忘れてたよ!だって!今日はあたしから誘ったんだよ…っ!?」
普段は見えない安堂くんの、気持ちが聞けて凄く嬉しい。
だけど嬉しいと同時に切なくなる。