キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉



胸がキュッと苦しくなる。

安堂くんが力なく、ふいに笑顔を浮かべた。


「うん。凄く嬉しかった」


今にも崩れてしまいそうな笑顔が胸を締め付ける。


「なのに小林、そーゆー格好で来るんだもん。だから言いたいことも言えなくなった…」


安堂くんが再び視線を背ける。


「だから茶化したり、意地悪言うしか出来なかった。…ごめんね?」


胸が張り裂けそう。

あたし、安堂くんを傷付けてしまっていた…?

それでも何かを戸惑って、安堂くんはあたしから視線を逸らしたままでいた。


「安堂くん…っ」


ギュッと、安堂くんの胸元の服を握った。

あたし、バカだから、全部が初めてだから、教えてくれないと分かんないよ…っ。

必死に見上げるあたしに、視線は避けたままの安堂くんが言った。


「気持ち、溢れちゃったら、止まんなくなりそーで…、ブレーキ…、効かなくなりそうで」

「あたしだって、ブレーキ全然効いてないよっ!一緒だよ!」


好きがどんどん加速している。

もう、止められない。

そこでやっと、安堂くんがあたしのことを見てくれた。


「――――……っ」


いつも無表情で、ひょうひょうとしていて、何ともないって顔してるのに…、ズルい。
そんな切なそうな瞳で見ないでよ。

また、好きが溢れ出す―――…。

安堂くんが、あたしの手をそっと握った。


「……じゃあ、ピーチの匂い、…嗅がせてよ」


繋いだ手はそのままに、顔の前、安堂くんが近寄ったのが分かった。

ふわっと、安堂くんの香り。

そして柔らかな唇が、あたしの唇に、触れた。

その瞬間、胸がきゅぅっと締め付けられて、泣きたくなって、好きって気持ちが、また、大きくなった。

好きって気持ちは、頭で考えるんじゃなく、心で感じるものなんだね。

幸せ。

あたし、今幸せ。


「…あ、あ、あ…っ、匂い、しなかったかも…っ!? あたし、さっき手でグロス…っ」


キスした後、どんな顔をすればいいのか分からなくて、あわあわと口を開いた。

塗ったらもう一度、キス、できるかな…?



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