キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「…なっ…、だって小林が、……いい、って…!」
「言ってません!あたしは断じて言ってませんっ!! 安堂くんのエッチ~~!!! スケベ!! ばかぁ!!!」
参考書を振り回すあたしに、安堂くんの顔が引き攣る。
「お前……っ」
それから、二人の鬼ごっこが始まった。
鬼はもちろん安堂くん。
広い部屋を縦横無尽に逃げ回るあたしと、チビなあたしよりも走りにくそうな彼。
ソファーの後ろを回って、キッチンに逃げ込もうとした時に、向こうの方で安堂くんが滑ったので、おかしくなって噴き出した。
「あはは…っ!あの安堂くんが転んだぁ…!」
「こっちは小林みたいに小回り効かないんだよっ」
膝をぶつけた安堂くんがちょっと拗ねた顔をしている。
「無駄にでかいもんねー」
「無駄ってゆーな」
安堂くんの前に座り、あたしはよしよしと頭を撫でてあげた。
「だからなんでガキ扱い…っ」
「嬉しーくせに」
「嬉しくねーよ!」
今日の安堂くんは何だか表情豊か。
「いてー」って膝を抱えている。
ひょうひょうとした安堂くんも好きだけど、こうやって感情を見せる安堂くんももっと好きだな。
そんな姿を見ながらニコニコしていると、安堂くんが拗ねた顔のまま、口を開いた。
「……恋の傷心を癒せるのは、新しい恋しかないんだろ?」
「!」
その顔は少し赤くて。
拗ねてるんじゃなくて、もしかして、ちょっとだけ…。
「だったら小林がその相手になってよ。俺の傍にいてよ」
赤らんだ頬。
もしかして、ちょっとだけ、照れてる…?
カーッと赤面が伝染して、あたしは真っ赤な顔で安堂くんを見つめていた。
「……返事は?」
目を伏せて、強気に彼が言う。
長いまつげが頬にかかって、お人形みたいな顔が恥ずかしそうに歪んで。
こんなに大好きなのに、これ以外の返事、出来ると思う?
「…うん…っ!傍にいるっ!」
嬉しくて。嬉しくて。
「へへっ」と笑うあたしに、安堂くんが不服そうな顔をした。