キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
安堂くんが観念したかのように頭を掻いた。
「……あれは……。昔のヤンチャの名残って、いうか」
ぽつり、と落ちてきた言葉に反射的に顔を上げた。
安堂くんは今もまだ、気まずそうに視線を逸らしている。
「……名残…?……ヤンチャ…?」
予想外な発言に、ぽかんとして安堂くんを見た。
安堂くんの顔がますます歪む。
「中1んとき、ちょっとした反抗期」
「へ…?」
「親に反抗して、髪、染めたりとか、煙草とか酒とか、無免許運転とか…」
「えっ!?」
これこそ予想外であたしは大きく声を張り上げた。
「む、無免許…!? 煙草!? お酒…っ!?」
「そ。ピアスはその時の名残」
「だから言いたくなかったのに」と唇を尖らせた安堂くんに、ホッと笑みが零れた。
なんだ。
なーんだっ!
「……へへっ」
「へへ、じゃねーよ。忘れたい過去だってのに」
安堂くんはブスッとしてあたしを睨んでいる。
「……そんなに酷かったの?」
「酷くない。別にフツー」
「……髪、何色だったの?」
想像したい。
そんなヤンチャ時代の安堂くん。
ニヤニヤが抑えきれないあたしに、安堂くんは拗ねたような顔を浮かべていた。
でも。
「……金」
「えっ!!」
ちゃんと答えてくれた。
(み、見てみたかったぁぁ…!!)
ちょっとヒネた感じの安堂くんも、きっとめちゃくちゃカッコ良かったに違いない。
「写真とか、ないの?」
「ないよっ!」
頭上の空みたいに、あたしの心も晴れ渡った。