キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「……最近、小林、やつれてない?」
1週間が経ったある日、安堂くんがぽつりと言った。
「え…っ!?」
「なんか…目の下、クマできてるし」
「う、うそ…!」
(メイクでごまかしたはずが…!)
「それに何か…、ちょっと痩せた?」
――――う。
あれから、毎日、根をつめてバイトに励んでいた。
安堂くんの誕生日は、今週末。
明日がバイト終わりの日で、明後日がお給料を貰える日。
明日まで働いて、どうにかギリギリ足りそうだ。
本当はもう倒れてしまいそうだけど、安堂くんの誕生日のため。
自分を奮い立たせて頑張っていた。
それに学校では学校で、相変わらず女子からの視線が痛い。
安堂くんには被害がいっていないらしく、全ての矛先はあたしに向けられていた。
(それもこれも、素敵な誕生日にするため、だもんっ)
女子にも負けないし、着ぐるみにも負けないもん。
ぐすっと洟(はな)をすすりながら、あたしは紙パックのジュースを飲んだ。
「……小林、俺――…」
『ピンポンパンポン』
安堂くんが何かを言いかけた時、校内放送が流れた。
『3年7組、小林知枝里。小林知枝里。至急、職員室まで来なさい』
景山先生の声に、サーっと血の気が引く。
「……小林、何したの」
安堂くんが呆れてあたしを見た。
今の今までうっかりすっかり忘れてたけど、今日期限の提出物、出すのを忘れていた。
すっかり忘れていた。
そして景山先生のことだ。
(今日、絶対居残りだぁぁぁ……!!!)