キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
終わった。
もう、間に合わない。
今日、バイトに行けなかったら、全ての計画が狂ってしまう。
明日で目標金額に達成できるはずだった。
明後日お給料日で、その足でプレゼントを買いに行って、そして次の日、安堂くんとラブラブな誕生日を過ごすはずだった。
(なのに……っ)
今、あたしは、居残りをくらって職員室前の机で提出物をやらされていた。
誰かが職員室に訪ねてくる度に、笑われた。
女子には「いい気味」と意地悪を言われた。
3年生になってから、ホントのホントについてない。
しくしくと泣きながら、それでも必死に筆を走らせていた。
少しでも早く終わらせて、バイトに行かなきゃ!!
バイトの終了時間は8時で、あたしが学校を飛び出たのが7時過ぎだった。
それでもまっすぐ帰る気にはなれずに、あたしはバイト先を目指して走っていた。
「す、すみません…、今日…っ」
ドタバタと事務所に駆け込むと、ぱちくりとした顔でおじさんに見られた。
「あれ?どうしたの。まだ、終わりの時間じゃないでしょ?」
「え…?」
「明日で最後なんだからさー。ちゃんと頑張ってよ?明後日、給料日なんだから」
おじさんの言葉にぽかんとした。
「そうそう。君とペアの桜田くん、今日無断欠勤してるでしょ?ごめんね~、迷惑かけちゃって」
「…………、」
おじさんの言葉の意味を考えながら、あたしはトボトボといつもの路地へ出向いた。
(え……?)
するとそこで、パンダの着ぐるみが一人、ティッシュを配っていた。
あたしは思わず駆けだした。
そのパンダ目掛けて、走った。
「な…、何してるのよ…っ」
絶対口は聞かないと、バイト先でも学校でも、この1週間無視していた。
話しかけられても聞こえないふりをして、ずっと怒りをあらわにしていた。
なのに。
なのに、この人は―――。