キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
あたしはバカだ。
やっぱり大バカ者だ。
本当は傍にいて欲しいのに、今は隣にいて欲しいのに、それを素直に言えなかった。
今、先生のことを思い出していたらどうしよう。
あたしのことじゃなく、先生のことを思い出していたら――……。
「い、やぁ~…。やっぱアンドーってすごい男だねぇ」
「……!!」
突然部屋の奥から、その声が聞こえてきてあたしは大きく振り返った。
そこには、窓から注がれる太陽の光を浴びた、桜田くん。
「な……、なんで、そんなところに…っ」
「ん?ここ、俺のサボり部屋」
桜田くんは「よっこいしょ」とコピー用紙の箱を越えた。
「それにしても、チェリーちゃんのカレシって凄くない?あの美人教師にも一目置かれちゃう存在?」
箱の上に腰を下ろし、にししと笑った。
「俺、あのセンセーのこと、ちょっと狙ってたんだけどなー!綺麗じゃん?あのセンセー」
軽いノリがイライラする。
「なんかさー、美人高校教師とイケメン男子生徒の恋、って禁断でヤバいと思わない?
あ、そのイケメン男子って俺ね、俺。けっこー絵になっていー…と」
桜田くんの言葉を聞きながら、あたしの頭の中では数か月前の二人のことが浮かんでいた。
美人教師と、綺麗な顔した男子生徒。
二人はどんな付き合いをしていたの?
学校でも、こうやって、二人でこっそり、会っていたりしたの?
キスしたり、それに――……。
「う、嘘だよ!チェリーちゃん!俺、マジで先生に手ぇだそうだなんて…っ」
桜田くんが大きな体を揺らして、手をバタバタ振って焦っている。
……馬鹿。
桜田くんのことで、泣いてるんじゃないよ…!
「…っ、……う~~~…っ」
「あー……。昔のことなんてさ?気にすること、ないと思うよ?」
桜田くんがぽつりと言った。
頬は濡らしたまま、あたしは背の高い彼を見上げた。
今、なんて……?
「あっ!! チェリーちゃん!印刷機が動いてるっ!!」
「えっ!!」
桜田くんが大きな声で指差すので、あたしは驚いて振り返った。