キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉


腕を引かれたまま、走った。

校舎の裏までやってきて、ようやく一息をつけた。


「あ、安堂くんが、なんでここに…っ!!」


胸を押さえて訊ねると、安堂くんはひょうひょうとした顔でこちらを見た。


「なんで、って?」

「だっ、て…!お化け屋敷は!? お化け役は!?」


そのせいでチケットの倍率が跳ねあがって、女子が化粧に気合い入れてて、それで、それで…っ。

必死な顔で安堂くんを見上げると、安堂くんは呆れた顔であたしを見下ろしていた。


「そんなの、俺がすると思う?」

「で、でも…!!」

「やるなんて一言も言ってないのに、勝手に女子がそーゆーことにしたんだよ。で、勝手に盛り上がってた」

「…………、」


そうだ、この男はそういう奴だ。


「じゃぁ、8組は……、今頃……」


考えるだけで血の気が引いた。

ナッチのような過激派が、安堂くんを出せって暴れているのが想像ついた。


「さぁ?別にどうでもいい。それよりもこれ食べたい。お腹空いた」


安堂くんは持っていたお好み焼きを持ち上げた。

それから二人で、お好み焼きを食べて、タコ焼きを食べて、かき氷も食べた。

イチゴを選んだから、ベロが真っ赤になった!と舌を見せたあたしに、安堂くんは鼻で笑った。

じゃ、俺は青?なんて、真っ青になった舌を見せてくれた。

人込みの中、安堂くんが変装してくれていたお陰で、誰にも気に留められずに過ごすことができた。

他愛もないものにはしゃいで、あたしは安堂くんの隣で笑っていた。


「あ…!」


体育館傍の武道館の前を通りかかった時、中からダンダンと爆音が零れてきていた。

そういえば女子が言ってたっけ。

彼氏がライブする、って。

立ち止まったあたしに、安堂くんが気づいた。


「入ってみる?」

「うん!」

< 208 / 352 >

この作品をシェア

pagetop