キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
腕を引かれたまま、走った。
校舎の裏までやってきて、ようやく一息をつけた。
「あ、安堂くんが、なんでここに…っ!!」
胸を押さえて訊ねると、安堂くんはひょうひょうとした顔でこちらを見た。
「なんで、って?」
「だっ、て…!お化け屋敷は!? お化け役は!?」
そのせいでチケットの倍率が跳ねあがって、女子が化粧に気合い入れてて、それで、それで…っ。
必死な顔で安堂くんを見上げると、安堂くんは呆れた顔であたしを見下ろしていた。
「そんなの、俺がすると思う?」
「で、でも…!!」
「やるなんて一言も言ってないのに、勝手に女子がそーゆーことにしたんだよ。で、勝手に盛り上がってた」
「…………、」
そうだ、この男はそういう奴だ。
「じゃぁ、8組は……、今頃……」
考えるだけで血の気が引いた。
ナッチのような過激派が、安堂くんを出せって暴れているのが想像ついた。
「さぁ?別にどうでもいい。それよりもこれ食べたい。お腹空いた」
安堂くんは持っていたお好み焼きを持ち上げた。
それから二人で、お好み焼きを食べて、タコ焼きを食べて、かき氷も食べた。
イチゴを選んだから、ベロが真っ赤になった!と舌を見せたあたしに、安堂くんは鼻で笑った。
じゃ、俺は青?なんて、真っ青になった舌を見せてくれた。
人込みの中、安堂くんが変装してくれていたお陰で、誰にも気に留められずに過ごすことができた。
他愛もないものにはしゃいで、あたしは安堂くんの隣で笑っていた。
「あ…!」
体育館傍の武道館の前を通りかかった時、中からダンダンと爆音が零れてきていた。
そういえば女子が言ってたっけ。
彼氏がライブする、って。
立ち止まったあたしに、安堂くんが気づいた。
「入ってみる?」
「うん!」