キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
そーっと暗幕の引かれた部屋に入ると、そこは耳を押さえたくなるほどの爆音が響いていた。
ムッと暑い熱気。
薄暗い部屋の中で、観客の生徒達が声をあげていた。
「……凄い人…」
「耳、痛い」
安堂くんが耳を押さえる。
「出る!?」
「いーよ。そのうち慣れる」
本当は絶対こういううるさい場所、苦手だろうに、安堂くんは優しい。
そんな安堂くんに胸が嬉しくなって、あたしは暗闇をいいことに、その腕にキュッと抱きついた。
「―――……、」
それに気がついて、安堂くんがこちらを見下ろす。
その瞳の中、やっぱり星屑が散りばめられている。
暗闇の中こそ、それが際立って……。
(き、きす……!?)
その瞳に吸い込まれるように、あたしはその唇を意識した。
―――――と。
『いぇーい!!!』
「!!!!!」
突然、マイク越しに叫ばれて、あたしの目は豆になった。
『きょーはわざわざここまで来てくれてありがとー!!!』
なんて、ミュージシャン気取りで叫んでいる奴がいた。
「………あいつだ」
「えっ…!?」
耳をつんざすその声に、耳を押さえて簡易の舞台を確認した。
「………えっ!?」
そこに立っていたのは、金髪ぎらぎらのあの男。
桜田くん。
曲が終わったらしく、手元のギターをじゃかじゃか鳴らして、ノリにノッていた。
どうやら、ボーカルも兼ねているらしい。
その圧倒的な存在感は、ある意味尊敬する。
ボーカルが桜田くんだと分かり、あたしは安堂くんの背を押して、武道館から出ようとした。
すると、その時、うるさかった音楽がパタリと止み、あたりが静寂に包まれた。
『えー…、次がラストの曲で、俺が初めて作った曲です』