キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
(…最悪だ…)
傘を差して、外に出た瞬間、土砂降りが豪雨に変わった。
傘を差している意味もないくらい、全身が雨で濡れてしまった。
ゴミ袋をゴミステーションに投げ入れて、文化祭で盛り上がるみんなの声を遠くに聞きながら、あたしは別館の裏口から校舎の中に入った。
「………小林ってバカでしょ」
「!」
ハンカチで制服を拭いていると、ふいに声を掛けられた。
顔を上げると、階段の数段上に、安堂くんが立っていた。
「あ、安堂くん…!? どうしてここに…っ」
驚いて見上げる。
安堂くんはそれには返事をせず、ポイッとタオルを投げてくれた。
「この雨で外に出ようとする人、フツーいないよ」
安堂くんが階段を下りてきた。
階段を下りると、安堂くんはあたしの前に立った。
「……なんか、俺、へんなこと言った?」
「……え?」
「――それとも、あのライブで、サクラダのこと、好きになった?」
「…えっ!?」
突然紡がれた質問に、大きく手を振る。
「そ、そんなこと…!あるわけないよっ!突然どうしたの…!?」
「あの後から、小林、なんか変だから」
「――――、」
安堂くんは敏感に、あたしの変化を感じ取ってくれていた。
「全然、小林が笑わなくなったから」
くしゃっと髪を触って、安堂くんが佇む。
窓に打ち付ける雨の音と、自分の鼓動の音だけが聞こえる。
ドキンドキンと、心臓が動いている。
「そ、そんなことないよ!ほら、あたし、この通り―――、」
そう言って、笑顔を見せようとしたら、身動きが取れなくなった。
その腕に抱きしめられていた。
「…あ、安堂くん…!? 安堂くんまで制服濡れちゃう…」
「濡れていーよ。制服なんかどうでもいい」
安堂くんはそう言って、抱きしめる力を強めた。