キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉


その前に、失敗した。

もしかしたらもう、触ってもらえないかもしれない。

傍に、いられないかもしれない。


「わわわっ…!? なに!? アンドーって意外と鬼畜プレーなの!?」


突然泣き出したあたしに、桜田くんが慌てている。

相変わらず、とんちんかんなことばかり。


「あたしがバカだから、全部、ダメ、にした、だけ…っ」

「…チェリーちゃん………ヨシヨシ。…びっくりしたんだね」


桜田くんが頭を撫でてくれた。

言ってる内容は全然意図を掴んでいないけど、その手は優しかった。


「……一生けんめー、好きなんだね」


言葉の一つ一つは、優しい。

あの、歌詞みたいに。

心の奥底にある何かを優しく撫でるような言葉、声。

きっと安堂くんが言った通り、桜田くんも一生懸命に誰かに恋していたんだろう。

…もしかしたら、今でも。


「……あ、ほら。噂をしたら、アンドーくんだよ。チェリーちゃん、まだ好きなら、ちゃんと伝えた方がいーよ」


トン、と背を押された。


「―――っ」


心の準備なんてできていない。

背を押されて、体勢を崩しながら、数メートル先、真正面に立つ安堂くんと向き合った。

その顔は、冷たく、驚くほど綺麗だった。

自分で撒いた種なのに、向き合えないほど怖かった。

怖い。

何も、…聞きたくない。


「……っ」

「あっ、チェリーちゃん!!」


安堂くんとは逆方向に走り出したあたしに、桜田くんが叫んだ。

その瞬間に、世界がふっと暗くなる。


「チェリーちゃん!」


その声が、どこか遠くに引っ張られて行く。

あたしを置いて、どこか遠くへ。


――待って、行かないで。

だけど、声にならない。

伝えたい人に伝えられない。

この手を、伸ばせない。


「―――――……っ」


声が完全に遠ざかった時、何かがプツリと途切れたのが分かった。

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