キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「………えり…!
知枝里…っ!!」
ふいに名前を呼ばれて、あたしは目を覚ました。
「良かった~…、起きたぁ~」
目の前で、ナッチとなべっちが大きくため息を零している。
あたしは真っ白な天井と向き合うように、どこかに寝かされていた。
「ここ、は…?」
起きようとして、腕に違和感を感じた。
視線を向けると、一本の管が繋がれていた。
「びょーいんよ!あんた、脱水症状と軽い栄養失調になってたのよ!!」
なべっちが、怒っている。
「聞いたところによると、二人して過激なダイエット、してたんだって!?」
なべっちが腰に手を当てて、ナッチを睨んだ。
さすがのナッチも、しゅんと肩をすくめて、なべっちの説教を聞いている。
「それで、学校で倒れて……。そりゃーもう、大騒ぎ!大変だったんだからね!!」
目覚めて早々、あたしもしゅんと項垂れた。
「ごめんなさい…」
「ごめんじゃないよっ!ホントに、もう…っ」
なべっちはそう言うと、怒った顔の中に、どこか泣き顔を隠していた。
「景山先生呼んでくるっ!!」
それを隠すように、椅子から立ち上がった。
病室から駆けだすと、ドアの向こうで平瀬くんが待ってくれていたらしい。
「大丈夫?」となべっちを気遣う平瀬くんの姿が見えた。
「学校が大騒ぎだった理由、教えてあげよっか」
スライド式のドアが閉まると、ナッチがやつれたその顔でふふっと笑った。
「安堂くんが、知枝里をお姫様だっこ、したからだよ」
何かを企むような笑顔がそう言った。
「………え?」
あたしはその言葉が信じられなくて、数秒遅れで、口を開いた。
「その場に居合わせた桜田に聞いたんだけどさ、知枝里が倒れた瞬間、駆け寄った桜田を押しのけて安堂くんが知枝里を抱きかかえたんだって!
あたしも、その後のことは教室から見てたんだけどね?カッコ良かったよー!
知枝里を抱えて走る安堂くん。あれは学年中の女子がヤラれたと思うね。凄い騒ぎだったね」
ナッチはうっとりと頬を染めて、反芻している。