キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
結局その後は、体調管理も受験勉強の1つだという説教に変わり、あたしとナッチは意識半分でその話を聞いていた。
景山先生が病室を去ると、今度はナッチとなべっちも席を立った。
「さて、と」
「帰りますか、そろそろ」
「え…、もう、帰っちゃうの…?」
「これからは二人の時間、でしょ」
「安堂くんがわざわざ病院に来てるんだもん!邪魔者は消えないと」
ナッチがウインクする。
「わざわざ、って?」
ナッチの言葉になべっちが問いかけると、ナッチは「ほら、タイプ的に」と言葉を濁して返事をした。
「じゃ!」
二人はそう言って、病室を出て行った。
それから少しして、再び病室のドアが開く。
久しぶりに向き合うその姿に、緊張した。
ナッチはああ言ってくれたけど、その顔は倒れる前に見た時と同じく、とても冷たかった。
「あ、あの…!さっき聞いたんだけど、安堂くんがあたしを…っ」
「もう起きて平気なの?」
安堂くんがあたしの言葉を遮った。
驚くほど、冷たく。
今まで聞いたことないくらい、冷たい声だった。
あたしは向けていた顔を、ゆっくりと下げて、小さく頷いた。
「う…、うん。もう平気…。点滴が終われば、もう、帰っていいって…」
「ふーん」
聞いているのか聞いていないのか、分からないほどの反応。
顔をあげることが出来なくなった。
「……………。」
そして、沈黙。
安堂くんもそれきり何も言わなくなって、だけどその場に佇んでいて、それはまるで何かを告げようとしている沈黙の時間のように感じた。
何かを言わなきゃ、と。
告げられる前に、違う話をしなきゃ、と。
焦るばかりで言葉は浮かんでこなかった。
募るのは想いと涙ばかり。
伝えたい気持ちはたくさんある。
なのにそれが、言葉にならない。