キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉

シーツをギュッと握りしめて、あたしはこの沈黙に耐えていた。


「……何か、言うこと、ないの?」


沈黙を破ったのは、安堂くんだった。

弾かれたように顔を上げた。


「言うこと、ないの?」


その瞳は、冷たく。

そして強く、あたしを見下ろしている。

その瞳が怖くて、あたしは再び視線を落とした。


「ご、ごめんなさ…」

「違う」


安堂くんが遮る。


「た…すけてくれて、ありがと…」

「違う」

「わざわざ来てくれて…」

「違う」


全て、違うと言われ、頭の中に残るのはたった一つになってしまった。


「お、お幸せに…っ」


これだけは言いたくなかった。

認めたくなかった。

あたしが自分のエゴで行動してしまったばっかりに、安堂くんにこんなはなむけの言葉を言うことになるなんて…。

本当に、なんてあたしは馬鹿なんだ。

堪えていた涙が、ぽつり、と甲に落ちた。

その瞬間、上から声が落ちてくる。


「……何、言ってんの?」

「…っ」

「お幸せに、って誰の話?小林は俺と別れたつもりでいるんだ?」


堪え切れない涙を溜めて、安堂くんを見上げた。


「だ、って…!安堂くんは1組の女の子と付き合うことにしたって…っ」

「誰がそんなこと言ったの?他の男と付き合うことにしたのは、小林じゃないの?」

「な…っ!何の話…!?」

「教室で。渡り廊下でも。俺には触るなって言うのに、アイツには触らせてたじゃん」


こちらを真っ直ぐに見つめる瞳が、怒りに満ちて揺れていた。

でも、それと同じくらいに、悲しみに満ちていた。


「俺はまだ、小林に触れちゃいけないの?」


そして真っ直ぐに捉えたまま、綺麗な唇がそう呟いた。

ポロポロと涙が溢れて来た。

ああ……。

やっぱりあたしって、なんて馬鹿なんだろう。

好きな人に、こんな顔させないと、

こんなこと言わせないと、気づけないなんて……。

溢れる涙を拭うこともせず、安堂くんに訴えた。


「いいよ…!いいに決まってる…っ」


言い終わるか言い終わらないかの間に、その腕にさらわれた。

ギュッ、ときつく。その腕が、抱きしめてくれた。


「……小林って、俺が伝えてることの半分も受け取ってくれないよね」


耳元でそんな言葉が弾けて、小さく顔を上げた。

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