キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉

てっきり、安堂くんの部屋に直行かと思っていたけど、そうじゃなかった。

いつものように、リビングに通されて、いつものように飲み物を用意してもらっていた。


「カフェオレでいいよね?」


キッチンに立つその姿が素敵だ。

その姿も、素敵だ。


「うん!ありがと」

「シュークリームもあるけど、いる?」

「いる!…って、安堂くんが買ってきたの?」


想像すると頬が緩む。

無表情な美男子が、突然お店に入ってきて、シュークリームください、なんて言ったら…。

あたしならそのギャップにやられる。

たちまち、恋に落ちちゃう。


「…そーだよ。誰かさんのこと、太らせないといけないし」

「もう十分戻りましたけど。悲しいくらいに」

「餌付けしないとすぐ他の男にフラフラするし」


安堂くんがあたしの方をちらりと見て、口角を上げて笑っている。

ヤキモチ?のような発言に、あたしの心はいちいち反応する。喜んじゃう。

一度落ちてしまった恋は、そうそう這いあがれるものじゃないのだと痛感した。

日を追うごとに安堂くんを好きになってる。

見つめるたびに。

まばたきするたびに。


「しませんよーっだ」

「よく言う」


べーっと舌を出すと、安堂くんがマグカップを持ってこちらにやってきた。

こんな些細な会話が嬉しい。

本当なら、こんな些細な会話だけでも嬉しいんだ。

でもだからって、今日はそれだけでは終わらない。

これからは布きれ一枚でも遠く感じてしまうほど、くっつきたい。

触れ合いたい。

きっとみんなこんな気持ちで、肌と肌で触れ合うんだ。

愛する人の全てを全身で感じたいから。


「この前間違ったの、微分積分の応用だったっけ?」


熱っぽく安堂くんを見つめていたはずなのに、安堂くんはさらりと参考書を広げた。

拍子抜けして、参考書に視線を落とす。


「……うん」

「どこで躓いたの?2問目までは解けた?」

「………うん」

「じゃ、式と数値は合ってるから……」


さらさらとノートにシャーペンを走らせる。

< 236 / 352 >

この作品をシェア

pagetop