キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
てっきり、安堂くんの部屋に直行かと思っていたけど、そうじゃなかった。
いつものように、リビングに通されて、いつものように飲み物を用意してもらっていた。
「カフェオレでいいよね?」
キッチンに立つその姿が素敵だ。
その姿も、素敵だ。
「うん!ありがと」
「シュークリームもあるけど、いる?」
「いる!…って、安堂くんが買ってきたの?」
想像すると頬が緩む。
無表情な美男子が、突然お店に入ってきて、シュークリームください、なんて言ったら…。
あたしならそのギャップにやられる。
たちまち、恋に落ちちゃう。
「…そーだよ。誰かさんのこと、太らせないといけないし」
「もう十分戻りましたけど。悲しいくらいに」
「餌付けしないとすぐ他の男にフラフラするし」
安堂くんがあたしの方をちらりと見て、口角を上げて笑っている。
ヤキモチ?のような発言に、あたしの心はいちいち反応する。喜んじゃう。
一度落ちてしまった恋は、そうそう這いあがれるものじゃないのだと痛感した。
日を追うごとに安堂くんを好きになってる。
見つめるたびに。
まばたきするたびに。
「しませんよーっだ」
「よく言う」
べーっと舌を出すと、安堂くんがマグカップを持ってこちらにやってきた。
こんな些細な会話が嬉しい。
本当なら、こんな些細な会話だけでも嬉しいんだ。
でもだからって、今日はそれだけでは終わらない。
これからは布きれ一枚でも遠く感じてしまうほど、くっつきたい。
触れ合いたい。
きっとみんなこんな気持ちで、肌と肌で触れ合うんだ。
愛する人の全てを全身で感じたいから。
「この前間違ったの、微分積分の応用だったっけ?」
熱っぽく安堂くんを見つめていたはずなのに、安堂くんはさらりと参考書を広げた。
拍子抜けして、参考書に視線を落とす。
「……うん」
「どこで躓いたの?2問目までは解けた?」
「………うん」
「じゃ、式と数値は合ってるから……」
さらさらとノートにシャーペンを走らせる。