キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉

「キャ~~~~ッ!!」


それからすぐさま手を引かれて、家を飛び出した。

マンションの駐輪場に置かれた自転車にまたがって、二人で坂を下っていた。

真夏の太陽の下、風を追い越して。

このまま空まで飛んでいけそうだ。

安堂くんと一緒なら、それも出来ちゃいそう。

浮かぶ雲にも乗れちゃいそう。

二人でなら、どこまででも行けちゃうのに。

このまま時間を止めてほしいよ。


「この前、病室で、約束した場所に行こっか」


―――え?

ま、まさか……!?

ホテ……っ!?


「海」


無意識に回す腕に力が入ったあたしを見て、安堂くんが笑った。

真っ赤に染まった頬は、太陽の日差しが暑かったからだってことにした。

…信じてもらえてなかったけど。

だから仕返しに、海の水をいっぱいかけた。

太陽にあたると透ける茶色の髪が、濡れて肌に張り付いた。

そんな些細なことさえも、脳内はアヤシイ変換をしてくれる。

ソウイウ時、こんな風になるのかな?

なんて、乙女らしからぬ。

頭の中が、えっちまみれだ。


「あーあー。小林が、本気で水かけるから、服までぐっちょりなんだけど」


それともう1つ。

見えない壁が存在する。

あたしも人のこと言えないんだけど、呼び名がお互い名字なんだ。

小林。

安堂くん。

いいんだけど……、やっぱりよくない。

恋人って名前で呼び合うのが特権の1つなんじゃないの?

だから今日を境に、体の壁と心の壁を打ち砕いてしまいたいんだ。

準備は完璧だ。

前に制服が濡れた時、安堂くんはなんて言った?


「濡れた服も、乾かせる場所があるんじゃないの!?」


真っ直ぐには見れなかった。

染まる頬は太陽のせい。

今まで散々照らされてきたから、言い訳する必要、ないよね?

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