キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「…たとえば、どこ?」
そ、それを乙女に言わせるか!?
彼女に言わせるか!?
咄嗟に顔をあげる。
すると意地悪そうにこちらを見ている安堂くんがいた。
「小林、さっきから、意識しすぎ」
ぴんっと鼻を弾かれた。
さ、さっきから、…って。
「気づいてたの!?」
―――と、言ってしまった。
慌てて口を押さえたけど、全て言ってしまった後だ。
「家に入った瞬間から意識してるんだもん。数学してる時も、ガン見してくるし、顔を見れば、そういうこと考えてますって書いてあるし」
頬が染まる。
そこまで分かっていて、それでも知らないふりをしてた。
安堂くんが信じられない!
「じゃ、じゃぁ…っ!」
「しないよ。有野に何吹きこまれたのかしらないけど、病室での話は嘘だよ。それに小林から誘うようなことじゃないよ」
きっぱりと言い切って、安堂くんはTシャツの裾を絞った。
ぽたぽたと落ちる水滴が、砂浜に跡を作った。
「夏だし、帰ってるうちに乾くでしょ。かき氷でも食べながら帰る?」
話の内容が内容だったくせに、安堂くんはいつもの通り、涼しげな顔をしていた。
たまに崩れる表情も、また真っ直ぐな無表情に戻っている。
だけどあたしは、さっきの言葉から動けずにいた。
ウソってどういうこと?
あたしから誘うようなことじゃないってどういうこと?
だったら安堂くんはいつまで経ってもあたしに触れたりしないんじゃないの?
いつまでも、キス止まりで、
いつまでも、小林止まり。
あたしとはそういうこと、したいと思えないってこと?
「……おかしいよ」
俯いたまま、聞こえるか聞こえないかの小さな声で言った。