キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「え…?」
それに、安堂くんが立ち止まる。
足元だけしか見えなかったけど、こちらを振り返っていることは分かった。
「そんなの、おかしくない…?付き合ってるのに、変だよ。あたし達、もうすぐで付き合って4か月になるのに」
キスまでだよ。
男の子は、女の子より、そういうことに興味があるんじゃないの?
そういうこと、したいって思うんじゃないの?
……好きなら。
「小林、焦ってるだけでしょ?そういうことがどういうことなのか、ちゃんと分かって言ってる?」
その言葉に、顔から火が出るかと思った。
安堂くんは、こういう時、すごく大人だ。
雑誌の統計なんてアテにならないくらい。
いつもいつも、オトナなんだ。
その余裕はどこから来るのか、考えたくもなかった。
やっぱり違うんだね。
2回目の人は。
……いや、2回、なんてものじゃない。
3年付き合ってたなら、そういうこと、数えきれないくらいしてきたよね?
あたしとは…、あたしみたいなコドモとはしたいって思えないくらい。
先生と、すごいことだってしてきたんでしょ。
考えたくないのに、溢れだす。
閉じていたドアは簡単に鍵を開けて開かれる。
「……そ、うだね…。あたし、何か焦ってた、のかも? ……変なこと言って、ごめんね」
顔は上げられなかった。
きっと今、また酷い顔している。
勝手に期待して、勝手に暴走して、勝手に焦って、勝手に自爆。
したいだけじゃないんだよ。
焦ってるだけじゃないんだよ。
好きだから触れたいんだ。
触れて欲しいんだ。
その言葉を、安堂くんは納得したのかしてないのか、それでも何も言わずにそれ以上は広げなかった。
「帰ろう」
そう言っただけで、それに対するフォローは何もなかった。
涙が零れそうだったけど、安堂くんの背中越しに甲で擦った。
だから頬に流れる前に阻止できた。
「かき氷、食べて帰る?」
あれきり、安堂くんは何もなかったかのように、普通の話をした。
「うん。あたし、イチゴがいい」
あたしも何もなかったかのように。
近付けると思っていたのに、なんだか昨日よりも遠くなった気がした。
「またイチゴ?イチゴ、好きだね」
「かき氷の王道だしね」
「ミルク入り?」
「あるなら絶対」
だから今日は自転車でよかった。
込み上げてくる涙を喉の奥でせき止めていること、安堂くんに見られずに済んだから。