キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
駅までの道のりは、あっという間。
それから二人で同じ電車に乗って、家を目指す。
電車に乗っちゃうと、先に降りる安堂くんの背中を見送らないといけなくなるから、無条件に寂しくなる。
その背中を見るだけで、胸が切なくなる。
…こんなに好きになりすぎちゃって、あたし、大丈夫?
こんなに近くにいるのに溶けあわない熱が、あたしに想像を掻き立てさせる。
安堂くんの肌に触れたら、触れられたら。
あたしはどうなっちゃうんだろう。
今でもこんなに好きなのに、これ以上好きになっちゃたら……。
あたし、どうなっちゃうんだろう。
「明日から、安堂くんはどんな予定なの?」
改札を抜けながら、安堂くんへと問いかけた。
今日で補習が終わり。
それはすなわち、明日から学校もないってこと。
「DVDでも観たいなぁって思ってる」
「はは!他の受験生が聞いたらびっくりだね。やっぱ頭のいい人は違うね。ヨユーっていうか」
いつもよりもちょっとだけ、テンションの高い自分がいる。
本当はこういうことが言いたいんじゃない。
明日から、あたし達は会えるの?って聞きたいのに。
“好き”が大きくなり始めてから、なんだかちょっと弱気なあたし。
「……小林も、一緒に観るんじゃないの?」
プラットホームに降りる時、安堂くんがぽつりと言った。
あたしは勢いよく顔をあげる。
「違った?てっきり、明日からも一緒に居られるのかと思ってたんだけど」
「…………っ」
その一言に、胸が頬が、心が熱くなる。
付き合って、もうすぐで半年になるっていうのに、今もまだ、あたしの頬は付き合いたてのカップルみたいな反応をする。
「観るなら、ちょーラブなDVDがいい」
「……俺、途中で眠くなるかも」
「大丈夫!今度こそ、最後まで目が離せないようなの選ぶから!」
明日からがもっと楽しみになった。
それに今週末は花火大会もある。
浴衣も出さなきゃ。
少しずつ長くなっているこの髪も、2年の終わりもよりも綺麗にアップにできるだろう。
残りも10日くらいしかないけれど、この夏に出来なかったこと、全てする。
出来ること、全てやりたい。
そう思ったら、去年の水着じゃ今年はダメな気がしてきた。
あれも欲しいし、これも欲しいし。
それをそれとなくお母さんに伝えたら、受験生に新しい水着は必要ありません!!って説教が返ってきた。
分かってないな。
受験生ではあるけれど、立派なティーンエイジャー。
今年しかできないこと、あると思うのに。