キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
03.キスと秘密基地。
恋というものを知らないあたしは、気の利いた慰め方など知るはずもなくて――…。
『あ、あたし、歌でも一曲歌いましょうか…!?』
『………いらない』
『あ…、あ、だったら、あたしの笑える失敗談とか…』
『………それなら一昨日の騒動でお腹いっぱい』
『………。』
『もう少し、こうしててよ』
耳元で、そう囁くのはズルイ。
このシチュエーションは、例え好きな男じゃなくても、完っ全に落ちるだろう。
夕焼け。屋上。腕の中。
フェロモンなのか、いい匂いはしたし。
腕の中、温かかったし。
しかも最後に。
『……明日は殻の入ってない卵焼きが食べたいな』
なんて言うのも反則だ!
あんな酷いお弁当だったのに、全部綺麗に食べてるっていうのも…。
(王道…っ)
なんて思いつつも、あたし、ヤバい。
一昨日から、ずぅ~~~~~っと、安堂くんのこと。
脳内、安堂モード。
水に浸けた、空っぽだったお弁当箱さえ愛おしい。
そんなよく分からない感情と付き合い始めて、早数週間は経っている。
お弁当は上達したし、放課後、安堂くんと過ごす時間も日常になり始めていた。
「……知枝里、もしかして好きな男出来た?もしくは…」
「え!?」
なべっちの言葉を遮って、あたしは大きく驚いた。
「す、す、好きな男…!?」
「だってー。なんかここ数週間でめちゃくちゃ可愛くなったし?」
「可愛く…!?」
「男子も噂してるよぉ?知枝里が可愛くなったって」
「えぇ!?」
彼氏いない歴=実年齢。
つまりモテたことない歴(告られたこともないので)=実年齢…。
だったあたしには夢みたいなパラダイス!
…いや、夢みたいなラブニュース!