キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
1時間、2時間……。
女はそれでも部屋の前から動かなかった。
たまにこちらに声をかけてくる。
「あたし、しつこいんだからこんなんじゃ絶対に負けないよ?」と。
もちろん返事はしない。
煙草が吸いたい。
腹も減った。
だけどこの女とは顔を合わせたくない。
ベッドに寝転がり、ただただ待った。
この女がいなくなるのを。
そうしているうちに、いつの間にか眠っていた。
時計を見ると、あれから3時間。
女が俺の部屋の前を占拠してから5時間が経っていた。
耳を澄ましてみると、物音ひとつしない。
ようやく帰ったか。
どこにぶつけるもできない怒りを抱えたまま、部屋のドアを開けた。
「あ、出てきた」
「!」
女はまだ、そこにいた。
しかも……。
「んだよ、この廊下」
廊下には、手一杯広げられたノートや冊子、プリント達。
「佐久良くんが出てくるまで、って思って、ちょっと勉強を…」
女は頭を掻くと、そそくさとそれを片付け始めた。
「今日はお互いの自己紹介から始めよっか。
あっ!佐久良くん!」
無視して、家を出た。
今度はエレベーターまでダッシュして、すぐさまボタンを押した。
女が走ってきたのが見えたけど、それはもう、エレベーターが動きだした後だった。