キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
(香水、なのかな?それとも…)
やっぱりフェロモン?
彼氏が出来る方法、伝授してもらおうかな…。
――なんて。
教室では飄々と、何事もなかったかのように過ごしているこの人。
だけど本当は、泣き虫なことを知っている。
(ヤバいな……あたし、ほだされてる……?)
そんなことを思いながら、よしよしと再び髪を撫でたその時。
「小林って、優しい匂いがする」
「えっ!!」
(やさ、やさ…優しいにおい…!?)
「な、な、なにを言って…!!」
「小林の匂い、落ち着く…」
「……っ!!!」
安堂くんのその言葉に、カー…ッと顔が赤くなるのが分かった。
彫刻みたいな人形みたいな顔をした男に、抱きしめられて(抱き着かれて?)、突然優しい匂いだの、落ち着く匂い、だの…!
(や、ヤバい…!!)
熱くなった頬をギュッと拭う。
自己鎮火だけでは間に合わなそう。
この男、何を言い出すんだ!
……でも、悪い気はしない。
ちょっぴり嬉しかったり、してる。
(って。もちろん彼氏に言われるのが1番だけど)
「……今、彼氏に言われたいって思っただろ」
「え゛?」
頬を押さえてニヤついていたあたしを、安堂くんは下からばっちし目撃していた。
図星のあたしを、呆れた瞳で見上げている。
「…安心して。小林の匂いってばあちゃん家の匂いだから」
「え゛っ…!!!」
喜び一転、涙目になった。
(お、おばあちゃん家……)
ショックの鐘が108回打ち鳴りそう。
ガーン、ガーンと脳内が揺れている。
そんなあたしを安堂くんが再び抱き寄せる。
(なべっちに相談しなきゃ…!)