キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉


次の駅で、桜田くんは降りた。

反対のホームに走るのが見えた。

階段をのぼって、連絡通路を渡るとき、桜田くんが振り返った。

「ありがと」って言ってる。

そして、チェリーちゃんもがんばれって。

あたしはそれに力ない笑顔を返した。

二人だけの問題だったら、あたしもきっと頑張れる。

だけど二人だけのことじゃない。

安堂くんには先生がいる。

あの時、あの歩道橋で、手を離されたことが、きっと答えだったんだと思う。

再び涙が込み上げて来て、あたしは街並へと視線を逃がした。

ゆるやかに列車が加速し始める。

街が滑るように逃げていく。

だんだんとかげり始める太陽が、ゆらゆらと優しく揺れていた。

どうか一人でも多くの人が、好きな人と幸せになれますように。

…ふいに浮かんできた安堂くんの顔。

この時は急いでかき消してしまった。



その日の夜、ナッチからメールが届いた。


[桜田からアドレス教えてってメール来たんだけど、メアド教えてもいい!?]


興奮気味。

無理もない。

ナッチの脳内は基本的に恋愛至上主義だ。

あたしは小さく笑って、それに返事をする。


[教えてもいいよ]

[桜田と恋の予感!?]

[まさか(笑)あたし達、意外な共通点があったんだよ。桜田くんっていい人だね]

[何があったの!?]


真っ赤になって興奮しているであろうナッチの顔が目に浮かんだ。

それを想像して、くすりと笑った。

するとすぐさま新着お知らせメール。


[今日はありがと]


桜田くんから。


[聞き忘れてたけど、海に叫んでた“生きた化石”って何のこと?]


「!!!」


思わず、目を剥いた。

画面越しに笑っている桜田くんが想像ついた。


……上手く行ったのかな?

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