キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
週が明けて、ナッチの要らぬ気遣いで、桜田くんと二人、いつもの渡り廊下にいた。
「会えたんだね!? すごいじゃん!」
「…おー。もう二度と顔合わせてもらえないって思ってたから、危うく抱きしめちゃうとこだった」
「……抱きしめたらよかったのに。そんで“好きだー!!”って叫んじゃえばよかったのに」
「そういうこと言っても、絶対信じてくれないタイプ」
「……確かに、桜田くん、誰にもやりそうだし」
「現に誰にでもやっちゃうし」
「……………、ダメじゃん」
「ははっ」
げんなりとした顔を向けると、桜田くんの笑顔が明るい。
「次、会う約束したの?」
「しては、ない。でも、何で夏休みのクラス会に来なかったのかって、そっぽ向かれて言われた」
「そっぽ向かれて?」
「そーゆー奴。基本的にいつも怒ってる」
「怒らせてる、んでしょ」
いつもの軽~い桜田くんからは想像つかない、可愛い横顔。
ちょっとだけ拗ねていて、それでいて、その子のことを思うと愛しくてたまらないって顔をしている。
見ているだけで笑みがこぼれた。
桜田くん、一生懸命恋してる。
「ふふ」と笑って、抜けるような空を見上げた。
すると隣に立つ桜田くんが「あ」と言った。
「ん?…―――!!!」
そちらへと顔を向けた瞬間、緊張が走った。
安堂くん。
瞳に映すだけで、今もまだ、胸が苦しくなる。
こちらに気づかず、職員室のある校舎へと歩いていく。
「ホント、何もなかったかのように、あっさり、な」
「そ、そりゃそうだよ……。あたしとは、副賞で付き合ったようなものだし」
「副賞って……。なんでそんなにいー子なの?俺なら絶対バラすけどね。アンドーはセンセーと…
ってはいはい。誰にも言いませんよ」
無言の圧力に、桜田くんが肩をすくめた。
「アンドーには分かってほしいよね。チェリーちゃんがこんなに優しい子だってこと」
桜田くんが空を見上げた。
そこにはそのまま溶けてしまいそうな、青。
あたしも一緒に空を見上げた。