キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
チェリーちゃんはね、不器用ってゆーのかな、ホントにね。
「……なんて歌、歌ってるのよ…!!」
地元に連れていった翌週、渡り廊下でジュースを飲みながら空を見上げていたら、隣のチェリーちゃんに怒られた。
「作詞作曲、アラシ・S」
「思いっきりさっ○ゃんの替え歌じゃない…!!」
あの日以降、少しだけチェリーちゃんが元気になった。…気がする。
今もまだ、悲しみは瞳の中に閉じ込めているけど、表情が前より明るくなった。
「だってあんまりにもチェリーちゃんが不器用だから~」
「桜田くんだって不器用だったくせに!」
「過去形だもーん。俺」
ぷくーっと頬を膨らませると、隣のチェリーちゃんは眉間にしわを寄せている。
「……てか、いーんだよ?毎日のようにナッチの策略に乗らなくたって」
チェリーちゃんのメアドを聞いたせいか、ナッチは何か勘違いしていた。
俺がチェリーちゃんを好きだって。
…ま、キライじゃないけど。
むしろ好きだけど。
「別に策略に乗ってここにいるわけじゃないよー?チェリーちゃんと話すの面白いからここにいるだけ」
「……他の人にも勘違い、されちゃってるし…」
「学年中が俺らの噂してるよねー?新しいカップル誕生だー、とか」
「あたしが酷い女だとか、ね」
「そうそう」
笑顔で頷くと、チェリーちゃんが鬼の形相になった。
目尻にちょっと、涙。
「俺、噂されるのなら慣れてる。酷い男のレッテルもフツーに貼られちゃってたし」
「あたしは慣れてないの!ただでさえ安堂くんとのことで不釣り合いレベル半端なかったのに、今度は真っ金金のヤンキーが相手でなんて…!」
「ひでー!見た目だけでの判断、禁止ー!」
拳を挙げると、チェリーちゃんは脱力する。
「桜田くんと話してると疲れるんだけど…」
「よく言われる」
それでも笑う俺に、チェリーちゃんはますます脱力した。
「いーんだよ。別に。あたしに構わなくても」
そしていつも、こう続く。
渡り廊下の桟に頬杖をついて、どこか遠くを見つめて。
「隣の席のよしみじゃん?」
「たったそれだけの仲でしょ!? フツー、隣の席だからってここまで親身になる人いないよ!?」
行動の裏には、何か特別な理由がないといけないと思っている。
人と人との繋がりなんて、結構こんなもんだと思うんだけど。
たまたま席が前後になった。
だから友達になった。
だから親身に話を聞きたい。
それだけで、十分だと思うんだけど。