キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉


結果、全てが叶ったわけじゃない。

顔を合わせて、数か月ぶりに話をした。

ただそれだけ。

相変わらず怒った顔をしていた。

俺にはいつも怒った顔しか向けてくれなくて、笑って欲しくてバカばっかりした。

それでも笑ってくれないアイツ。

他の男の前では簡単に笑うアイツ。

それを見た瞬間、全てを傷つけたくなった。

ブッ壊してやりたくなった。

強引に手に入れようとして、拒否られた。

結果、俺が傷ついた。

顔も見たくないって叫ばれた。

泣かせたくなかった。

……なのに。

頬を伝う涙を見た瞬間、何もできなくなった。

他の女がいくら笑ってくれたって、何も意味はない。

他の女、笑わせるのが得意だったって、何の意味もない。

顔を合わせたと同時に、あの頃の自分を思い出して苦しくなったけど、でもそれでも嬉しかった。

一歩前に進めた。

クラス会、何で来なかったのって怒っていたアイツが、すごく愛しくなった。


だから俺も、チェリーちゃんのために出来ること、なんでもしてやりたい。


「委員長ー、ちょっとお願いがあるんだけど」


借り物競走の委員長は、前にアンドーと噂になった1組の女だった。

女は慣れ慣れしく話しかけた俺に怪訝そうな顔を向けた。


「…なに?」


おお怖。

眉間に刻まれた不機嫌なしわ。

アンドーの隣を歩いていた時とは別人だ。


「借り物競走でさ、小細工させてよ」

「はぁ?そんなの出来るわけないじゃん。何言ってんの?」


……可愛くねー女だな。

好きな男の前だけで猫かぶるタイプ?

これじゃアンドーにフラれちゃうのも分かるな。


「委員長にとって、悪い話じゃないと思うんだけど」


こそっと耳打ちをした。

アンドーの元カノちゃんを自分のものにしたいんだ、って伝えた。

チェリーちゃんが誰かのものになれば、きっとアンドーを落とせる率、上がるんじゃないの?と囁いた。

女はコロッと態度を翻し、俺の提案に簡単にノッかった。


< 314 / 352 >

この作品をシェア

pagetop