キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
借り物競争本番で、戸惑うチェリーちゃんの手を強引に引いた。
紙に書かれていたのは“好きな女”だとみんなの前で言ってやった。
その時、ばっちりアンドーの顔も見た。
崩れない表情が、この時だけは…、
チェリーちゃんが関わった時だけは崩れるんだ。
後悔しろ、アンドー。
お前は心優しいチェリーちゃんを傷つけて、手放したんだ。
センセーとどんな経緯があって、どんな付き合いがあって、その選択をしたのかはわからない。
チェリーちゃんは優しいから、全てを許そうとしている。
でも、俺は優しくないから虐めてやんの。
チェリーちゃんが傷ついた分だけ、お前も傷つけ。
でも結果、チェリーちゃんを傷つけることになってしまった。
フォークダンスで、チェリーちゃんとアンドーが一緒に退場。
耳まで真っ赤になって俯いているチェリーちゃんに胸が苦しくなった。
「あんたの好きな人、元カレと退場だよ」
知らない女に嫌味を言われた。
あの時俺を突き飛ばしたアンドーは、そこにはいない。
チェリーちゃんを映すあの瞳は、傷つけてしまったことを後悔しているだけの瞳なのか?
それだけなのか?
冷静なアンドーに、勝手に腹が立った。
体育祭は、噂通り、3年生の総合優勝。
片付けはばっくれて、打ち上げはどうしようかと迷っていた。
遠くに聞こえるざわめきと、夕方になると涼しくなる風に、秋の訪れが近いことを感じさせられた。
寒い季節は嫌いだ。
人肌恋しいってだけで切なくなる。
それを拭うように、「ふんふんふん」と鼻歌を歌いながら、靴箱へ向かった。
打ち上げに参加しよーかなーって思っていた時、ふいにその姿に視線が止まる。
「……アンドー…?」
気づいた俺に、アンドーが近づいてきた。
「ちょっと、いい?」
その瞳はまっすぐに、俺を見据えていた。
表情は崩れない。
「話がある」と無表情に言い、アンドーは歩いていく。
俺は頭を掻いてそれに出向いた。
ほんとにこいつって無表情。
この顔からは何も読み取れない。