キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
―――でも。
小林と出逢って、感じた感情は真逆だった。
大切にしたい、って思った。
その存在を。
守りたい、って思った。
ただその感情が、本当はどこに繋がっているのかが分からなかった。
絵梨への後悔がそうさせているのか、自分の中の素直な感情なのか。
ずっと、目を逸らしていた。
目の前にいる小林を大切にしたいと思う気持ちを信じていたかった。
だけど。
あの時、手を離してしまった時。
自分の中の答えは前者だったんだと思った。
結局は絵梨の影を追っていたのか、と。
ただ小林を傷つけた。
自分が、最低だって思った。
このままどこかに消えたくなった。
手術が終わるのを待ちながら、うちひしがれた想いでいた。
でも―――。
目を覚ました絵梨と顔を合わせた時、視線が合った時。
感じた。
もう自分の中ではちゃんと過去になっていたこと。
瞳を見ても、ただ懐かしいだけでそこに特別な感情はないってこと。
ただありがとうと伝えたかった。
そのことだけが心残りだった。
だから心のどこかに残っていたのか、と。
サヨナラを伝えて、この場を去るはずだった。
逢いたい人は、
傍にいたい人は、
大切にしたい人は、
大切にしたいと思った感情は、
絵梨の影を追ってのことじゃない。
自分の中の素直な気持ち。
だけど、現実は酷く無情で―――。
「ねぇ、佐久良くん。あたしってさ、ケガする前に大学卒業後のこと何か話してなかった?」
―――がんじがらめになって動くに動けない。