キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「……ねぇ。やっぱり何か無理してるでしょ?」
数日後。
夕方の病室で、いつものように本を読んでいると絵梨が言った。
「何言って…」
「ごまかしてもダメ!あたしには分かるんだから!」
絵梨が目元に力を入れて、俺を見据えている。
「何もないよ。考えすぎ。ほら、いい企業見つかったの?」
ベッドにかませたテーブルの上、広げている雑誌類に視線を落としてみせた。
「佐久良くん!」
「退院してから就活するんでしょ?頑張らないと」
「もうっ!」
受け付けない俺に、絵梨が怒って声を荒げた。
それでも無視して、読んでいた本に再び視線を落とす。
絵梨はぶつぶつ言いながらも、諦めたらしく雑誌を手に取った。
「…………あ。」
…はずが、こちらを見て口を開けた。
ポカンと口を開けたマヌケ面に、俺も視線を向けた。
「…今度はなに?」
「佐久良くん、ピアス変えたの?」
俺の耳を見つめて、絵梨が言った。
耳元に触れながら、視線を落とした。
あの時とは違うピアスが、今、俺の耳には光っていて。
これを外すことができないと、苦悩している。
外したくないと思っている。
「……ああ。ピアス、変えたんだ」
「もー!せっかく目立たないピアスに変えたのにー…!まぁ、それ、凄く似合ってるけ…ど…っ…、」
言葉の途中で絵梨が頭を押さえた。
「……絵梨…?」
頭を抱え込むようにして、体を丸める絵梨に、眉を寄せた。
体が小刻みに震えている。
「………たい……っ」
「おい、どうした…?」
「…痛い…っ。頭が…、いた…っ」
「絵梨!? おい!!」
頭を押さえた体勢のまま、絵梨は苦悩に顔を歪めて、ベッドに倒れこんだ。
俺は慌てて枕元にあった、ナースコールを押した。
天井のスピーカーから、看護師の声が聞こえる。
天井に向かって叫んだ。
数名の看護師がバタバタと病室に駆けつけた。