キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
せっかくの大スクープの現場に居合わせたのに、その証拠となる写真を押さえることも出来ず、ましてや携帯さえも手元になく、意気消沈して、うなだれてベランダに座り込んだ。
夕陽はだんだんと傾きを強め、暗闇が世界を侵食し始めている。そして同時に、夕陽の落ちて行く世界は、だんだんと肌寒さを強めていっていた。どうにか手の平でくしゃみを受け止め、カタカタと震えはじめる体を両手で抱き締める。
ようやく別れ話にケリがついたのか、教室の中は静まり返っていた。
そろりと瞳だけで覗くと、先生が先に教室から出て行ってしまったらしい。
だけど、まだそこに、安堂くんの姿があった。こちらに横顔を向ける体勢はそのまま、机に寄り掛かるようにして俯いていた。
夕陽の沈み始めたその色彩の中に、一人佇む安堂くんも、それはそれは絵になった。
しかし今は、自分の身の安全が1番だ。このままではいつまで経っても帰れない。
寒さで死んでしまう。まだ初秋なのに、なんだ、この、寒さは…!
(っくちっ!)
もう一度、くしゃみを手の平で受け止めて、体を摩った。
センチメンタルに浸るのは、家に帰ってからにしてくれ。