キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「へっ!?」
突然渦中のことを訊ねられて、心の底からびっくりした。
「な、なん、なん…!?」
「あ、もしかして彼氏がいるの?」
先生の質問に、高速で頭(かぶり)を振る。
「い、いません!滅相もございません!!」
そう言うと、先生が笑う。
「えー、意外。彼、いそうなのに」
「え、本当ですか!?」
大人の、しかも美人教師にそう言われると、自然と顔が上がる。
嬉しくて、頭の後ろを掻いた。
「でも、嬉しいんですけど、いないんですよねぇ~。産まれてから、一度も」
「え、一度も?」
今度は先生がびっくりした。
「ずっと欲しいって言ってはいたんですけど、実はここ最近、盲点に気が付きまして…。いや、正確には気付かされたんですけど…。あたし、人を好きになったことがない…みたいなんです。彼氏が出来るはずがないっつー話で…」
「ふふ。小林さんらしい」
「え、あたしらしい!? それってどういう…っ」
「可愛いなーって」
「………!!」
先生に褒められて、頬が紅潮する。
お世辞だって思いつつも、言われて嬉しくない言葉じゃない。
先生はニコニコと微笑んでいる。
頬が、ますます熱くのを感じた。
「あ、あたしのことより! せ、先生はどうなんですか!?」
恥ずかしさから逃げ出したい余り、あたしはまたしても。
言ってはならない禁止ワードを踏んでしまった。
(どひーーーーー!!!!!)
「あ、やっぱり、今のは無…」
「最近ね、別れたんだ」
(――――っ)
印刷機を背に、オロオロとするあたしのことは横目に、先生はホッチキスでプリントを留めながら、そう言った。
「え………、そ、そうなんですか!? 先生、やっぱり、彼氏、いたんですね…!!」
知っているけど知らないフリ。