キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉



「へっ!?」


突然渦中のことを訊ねられて、心の底からびっくりした。


「な、なん、なん…!?」

「あ、もしかして彼氏がいるの?」


先生の質問に、高速で頭(かぶり)を振る。


「い、いません!滅相もございません!!」


そう言うと、先生が笑う。


「えー、意外。彼、いそうなのに」

「え、本当ですか!?」


大人の、しかも美人教師にそう言われると、自然と顔が上がる。

嬉しくて、頭の後ろを掻いた。


「でも、嬉しいんですけど、いないんですよねぇ~。産まれてから、一度も」

「え、一度も?」


今度は先生がびっくりした。


「ずっと欲しいって言ってはいたんですけど、実はここ最近、盲点に気が付きまして…。いや、正確には気付かされたんですけど…。あたし、人を好きになったことがない…みたいなんです。彼氏が出来るはずがないっつー話で…」

「ふふ。小林さんらしい」

「え、あたしらしい!? それってどういう…っ」

「可愛いなーって」

「………!!」


先生に褒められて、頬が紅潮する。

お世辞だって思いつつも、言われて嬉しくない言葉じゃない。

先生はニコニコと微笑んでいる。

頬が、ますます熱くのを感じた。


「あ、あたしのことより! せ、先生はどうなんですか!?」


恥ずかしさから逃げ出したい余り、あたしはまたしても。

言ってはならない禁止ワードを踏んでしまった。


(どひーーーーー!!!!!)


「あ、やっぱり、今のは無…」

「最近ね、別れたんだ」


(――――っ)


印刷機を背に、オロオロとするあたしのことは横目に、先生はホッチキスでプリントを留めながら、そう言った。


「え………、そ、そうなんですか!? 先生、やっぱり、彼氏、いたんですね…!!」


知っているけど知らないフリ。



< 41 / 352 >

この作品をシェア

pagetop