キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉



安堂くんが平然を装ってるだけってことは、多分あたしだけが知っていた。

泣いちゃうくらい大好きな先生の授業に、それでもきちんと出ているのは……きっと安堂くんなりの優しさだ。

別れた相手を傷付けないための、
別れた相手を困らせないための、
安堂くんの優しさ。

本当は安堂くんが1番辛いはずなのに、それを心の奥に隠して、いつも通り。

ひょうひょうとした顔で生活してるけど――。

あたしの前では見せたのに。

全然関係ないあたしに慰めてもらいたいほど、寄り掛かってしまいたいほど、心が泣いているって、あたしには見せてくれたのに。

あたしって………。


(…ホントに馬鹿…っ)


「え…!? ちょ、知枝里…!?」


突然目の前で泣き出したあたしに、なべっちが慌てふためいた。

教室もザワザワと揺れる。


「ちょっと、どうしたの!? そんなに彼氏欲しいの!?」

「………うぅ…っ、彼氏、欲じいよぉ…!!」


親友だけど、この涙の理由(わけ)は内緒。

それでも友達の腕の中って温かい。

なべっちの腕の中で、洟をすすった。


「なべっち~~」

「ああー、よしよし。知枝里、ホントにマジで最近可愛くなったから…、そうだ!合コンしよ!? 彼氏の友達もこの冬を一緒に過ごす彼女が欲しいって言ってるらしいんだよね!」


もう、一週間前から、彼氏なんてどうでもいーよ。

人を傷付けるような女に、恋なんてできるわけないんだよ。


「ホントに、いいの?」


なべっちがせっかくのチャンスを与えてくれたのに、あんなに彼氏が欲しいって…去年のクリスマスにサンタクロースにさえ願ったはずなのに、今のあたしは気乗りしなかった。


「…うん、いいの。あたしブスだから」


ズーンと、キノコが生えてしまいそう。


「……確かに、今はブス…」


なべっちも恐る恐ると言ってくれる。

肌はボロボロ、髪はボサボサ、目の下にはクマ。



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