キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
何故か夜になると涙が出るし、あんまり眠れないし、食欲ないし。
ラブボルテージをチャージする、雑誌を見てもピンとこない。
月の頭に読んでいた“1ヶ月シリーズ”の本たちも、今は全て色褪せている。
何故か全然、盛り上がらない。
それでも毎日、鞄の中には2つのお弁当が入っていた。
小さなお弁当と、それより一回り大きなお弁当。
「あたし、彼氏んとこ行かなくてもいいんだよ?」
「えっ、いーよいーよ! せっかくラブラブなのに、そんな邪魔できないっ」
「邪魔とかじゃないよっ」
「いや、あの…。考えることもあるし。どうやったらこのクマが……直るかなって思って」
「でも…っ」
「大丈夫。友だちも、いるし」
お弁当の入った鞄を持ちあげ、にこっと笑った。
去年同じクラスだった友達と食べていると嘘をついていた。
「…ついでに肌荒れも、髪の荒れも考えるんだよ…?」
なべっちは念を押すと、こちらを振り返りながらも、廊下で待つ彼氏のもとに走って行った。
彼氏に何かを言い、不安そうにこちらを振り返った。
そんななべっちに手を振り、あたしはいつもの場所を目指す。
あれからずっと屋上の扉の前でお弁当を広げている。
どんなに待ってたって、安堂くんが来ないことは知っている。
今日も、なべっちと入れ代わりに、パンを抱えた安堂くんが教室に入って来た。
だけどどうしても待たずにはいられない。
作って来ずにはいられない。
一人で何かを食べても、美味しいものは美味しい!と感じるタイプだったのに、今では全然そう感じない。
上手になったと思ってた料理も、大したことなかったのかもしれない。
箸を片手に、家でも、何をするにも、携帯を閉じては開いてばかりいる。
あたしが誰かを好きになったことがあって、ベランダに閉め出されるようなおバカじゃなかったら…。
気の利いた、メールの1通でも送れているのかも、しれない。