キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉



結局進展のないまま、それからまた、10日が経っていた。

クリスマスまであと3日。

誕生日まで、あと3日。


『って時に風邪なんて…、今年の知枝里、ほんっとツイてないねぇ~』


電話越しになべっちの声。


「…仕方ないよ。きっと天罰だから」

『天罰? 知枝里の肌がボロボロになって、髪がボサボサになって、もう3週間だよ?』


そう、もう3週間。

1日1日がやたらと長くて、でも振り返れば、流れるような速さで。

あれからご飯が食べられなくなって、眠れなくなったら、風邪を引いていた。


『でも…。インフルエンザじゃなかったのがせめてもの救い…かな? 誕生日、お家に行くから』

「えっ、いいよいいよ! 初めてのクリスマスじゃん! なべっちあんなに楽しみにしてたじゃん!」

『そりゃ、イブはね? でもクリスマス当日は家族や友達と過ごすための1日だよ。それまでに少しは元気になっててよー!?』


なべっちの元気な声に励まされ、あたしは少しだけ元気をもらって電話を切った。

せめてクリスマス。せめて誕生日。

風邪だけは治していたい。

あれっきり、携帯は一度も鳴っていない。

安堂くんとあたしの関係は、言ってしまえばこんなにも細くて脆くて頼りない。

風が吹けば倒れてしまう紙みたいな関係で、雨が降れば崩れてしまう泥みたいな関係だ。


「もう、気にしないもーん」


謝れない自分に腹が立ったけど、3週間経っても許してくれない安堂くんにも腹が立った。


(ちっさい男!)


…なんて、嘘だ。

それくらい酷いことを言ったのだ、と、考えることさえ辛くなった。

夜は夢を見る。

ズブズブと底のない沼に足をとられて、そのままもがいて沈んでいってしまう夢。

必死に助けを求めるけど、その人は振り向いてはくれない。

途中で苦しくなって、悲しくなって、汗びっしょりで目を覚ます。

汗をかいているはずなのに、この発熱はなかなか治らない。

クリスマスまで、誕生日まで、3日なんてあっという間だ。

2回寝て、目を覚ませば………。



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