キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
(ホントにクリスマスになってる…)
今年のクリスマスはいつもよりも最悪。
まず風邪だし、イルミネーションも見に行けなかったし、ケーキも家族とだし、置いてあったプレゼントは参考書だったし。
見ただけで、ますます熱が上がりそう。
体温計を脇に挟み、もう一度ベットに横になってまぶたを閉じる。
昨日の夢は、結構いい夢だった気がする。
この寒い冬がいつの間にか終わっていて、ポカポカの春になっていた。
その柔らかな木漏れ日の中に、ふわふわの髪の誰かが座ってて―――…。
―――ピピッ、ピピッ。
そこで体温計が鳴った。
(7度3分…。上出来)
久々の7度前半。痛かった節々も、今日は比較的痛くない。
そのまま再び目をつぶった。
するとピンポーン、とチャイムが鳴った。
さすが親友、ナイスタイミング。
1階がパタパタと騒がしくなる。
目を瞑ったまま、耳だけで世界を感じていた。
お母さんの声が普段よりもちょっと高くなって、ドアを開ける音が遠くに聞こえる。
それからパタパタと階段を登る音がして―――。
「知枝里、お客さん」
―――――ん?
“お客さん”…?
いつもなら、「なべっちよ」と誰の友達かも分からない名前で呼ぶのに。
「…ぅ、ぅわぁぁぁ…!!!」
キャーとか、キャッとか、可愛い叫び声はいくらでもあるのに、突然ついて出た声は、それはそれはオッサンくさかった。
「なななななんでああああああんどうくんがこここここここに…!?」
夢で見た姿。
陽だまりの中、春の木漏れ日の中、ふわふわ揺れる髪の毛の主。
でもそんな春はやって来ないと、起きたらいつも涙が流れてた。
そんな、もう遠い存在になったはずの安堂くんが、今。
なぜかあたしの部屋にいる。
「……風邪、そんなに酷いの?」
「え…!? あ、うん。もうだいぶ熱も落ち着いた…。7度3分まで…」
「そう。それにしてもツイてないね。せっかくのクリスマス、ずっと家にいたんだ?」
「そ、そうなの!もうずっと、寝てただけで…っ」
安堂くんはお構いなしにあたしの顔を覗き込むから、この状況についていけなくて、あたしの心臓は暴れていた。
「な、なんで安堂くんがこの部屋に…っ」
わたわたと慌てふためきながらも、若干目を回しながらも、負けじと安堂くんに訊ねる。