恋は理屈じゃない
あなたに首ったけ
東京プラチナガーデンを後にすると、ホテル・グランディオ東京に向かう。その最中に【副社長の都合のいい日に、五分だけ会ってください】とメールをした。ネクタイを渡したいということを内緒にしたのは、速水副社長の驚く顔が見たかったから。でも次の日の朝になっても、彼からの返信はなかった。
仕事が忙しいのかな。そんな時にメールなんかしちゃって、迷惑だったかもしれない……。
一方通行のメール履歴を見ては、ため息をついた。沈んだ気分を引きずったまま出勤すると、更衣室で制服に着替えて店舗に急ぐ。
火曜日の今日は花の入荷がある。伝票と注文した品のチェックと仕分け、余分な葉を落として茎を切り直す水揚げと呼ばれる作業もしなければならない。
落ち込んでいる場合じゃないよね……。
気持ちを切り替えると早速仕事を開始した。
一日の仕事を無事に終わらせると、更衣室に向かう。制服のポケットからスマートフォンを取り出すと、メールの受信をチェックした。しかし、速水副社長からの返信はない。
もしかして私、避けられているのかな……。
でも避けられる理由がわからない。グルグルと考え事をしながら歩いていると、更衣室にたどり着いた。
速水副社長に贈り物をしても迷惑かもしれない。これは持って帰ろう……。
着替えを済ませると、バッグとネクタイが入ったギフトケースを手にする。そしてロッカーの扉を閉めると、更衣室を後にした。