恋は理屈じゃない
「笠原を失い、蘭に裏切られ、正直誰を信用したらいいのかわからなくなった。けれど、そんな疑心暗鬼になっていた俺の隣で笑顔を見せてくれたのは鞠花ちゃん、キミだった。鞠花ちゃんと一緒にいる時だけは、笠原のことも蘭のことも忘れることができた。笠原に会いに行く日を今日と決めたのも、鞠花ちゃんと一緒ならすべてがうまくいくと思ったからだ」
笠原さんのもとを訪ねる日と、私が仕事を休むことができる月曜日の今日が重なったのは、ただの偶然じゃなかった……。
事実を知り驚く。そして速水副社長が深く傷ついていた過去を思い出して、また胸が痛んだ。
「副社長は私を買い被りすぎです」
「いや。鞠花ちゃんはそのかわいらしい笑顔で俺を励まし続けてくれたんだ。本当にありがとう」
私が笑顔になる理由は、速水副社長と一緒にいられることがうれしいから。
単純な私は、意地悪で優しいあなたのことが大好きなだけなんです……。
胸に秘めていた速水副社長への思いが、大きく膨れ上がっていくのを自覚した。
もう、この感情をひとりで抱え込むのは無理だ。私の気持ちを、速水副社長に知ってもらいたい……。
「私、副社長のことが……」
告白をしようと思ったものの、頬に手を触れたまま私を見つめる速水副社長の視線が恥ずかしい。口先まで出かかった『好き』という言葉が言えずにうつむくと、彼の指が頬を滑り落ちて顎に添えられた。