恋は理屈じゃない
失恋の痛み
笠原さんと合流すると、午後三時発の新幹線に飛び乗った。
青森に向かう時は速水副社長と並んで座ったけれど、帰りは違う。速水副社長と笠原さんが並んで座ると、座席テーブルの上にパソコンが置かれる。その画面を真剣な面持ちで見つめながら仕事のことを語り合うふたりの様子を、通路を挟んだ座席から見つめた。
新幹線が東京駅に到着するのは、午後六時三十分。順調にいけば七時過ぎには家に着くかな。
そんなことを考えながら、シートにもたれかかった。
すれ違いがあったけれど、お姉ちゃんと笠原さんはきっとうまくいく。世界にたったひとりしかいないお姉ちゃんが、幸せになることをうれしく思った。その反面、湖畔でのやり取りを思い返すだけで胸がズキリと痛み出す。
速水副社長のこと、忘れなくちゃダメだよね……。
そう思えば思うほど、速水副社長と遊園地に行ったことや、今まで交わした会話が頭の中によみがえってしまった。
お願いだから、これ以上私を苦しめないで……。
記憶の中の速水副社長に向かって文句を言っても、余計虚しくなるだけ。
通路を挟んだ速水副社長と笠原さんに背中を向けると、ハーフコートを頭からすっぽりと被る。そして寝たフリをしながら、瞳からこぼれ落ちる涙を静かに拭った。