恋は理屈じゃない
間近に迫ったクリスマスを意識して、真っ赤なポインセチアを使って会場装花を仕上げていく。
そういえば、まだお姉ちゃんと一緒の部屋で寝ていた幼い頃、サンタさんにひと目会いたくて、ふたりで夜遅くまで起きていたことがあったな……。
クリスマスイヴの出来事を思い出す。
でも睡魔には勝てず、結局寝ちゃったんだよね。そして朝目が覚めたら枕元にプレゼントが置いてあって、両親にサンタさんはいつ来たのかって必死になって聞いたんだよね……。
ちょっぴり懐かしい思い出に浸っていると、背後から声をかけられた。
「須藤さん、久しぶりだな」
「副社長!」
いつの間にか結婚披露宴会場に姿を現していた速水副社長に驚く。
「元気だったか?」
「はい。副社長も元気そうですね」
「まあな」
速水副社長とは青森に一緒に行って以来、直接会って話すこともなくなったし、電話もメールもしていない。ホテル・グランディオ東京のロビーを横切る速水副社長の姿を見かけたことは数回あったけれど、呼び止めることなく、その姿を遠くからそっと見つめるだけ。
久しぶりに会った速水副社長とのひと時がうれしい。