恋は理屈じゃない
LOVE*11
合コンのお誘い
お姉ちゃんと笠原さんの結婚式も無事に終わり、年末年始が慌ただしく過ぎていった。そして私が最も嫌いな季節に突入する。
四季折々の花を取り扱う仕事に携わっている私が苦手なのは冬の寒さ。朝は温かい布団から出るのが辛いし、花を活ける水の入れ替え作業は寒さが身に沁みるし、手も荒れる。
しかし、そんな寒い冬もようやく終わる。
春の訪れを告げるように桜が満開になった、四月上旬の日曜日。身支度を整えると、結婚披露宴の装花作業をするためにホテル・グランディオ東京に向かう。
速水副社長に自分の思いを伝えてから、すでに三カ月以上が経っている。あれから彼とはロビーや通路でバッタリと出くわすことが数回あった。けれど、お互い軽く会釈をするだけ。
こうして距離が離れていき、速水副社長に抱いていた恋心も自然に薄れていくのかもしれないな……。
未練たらしく速水副社長を思っていた気持ちも、春の訪れと共に少しだけ変化していくのを実感していた。
そんな矢先、仕事が終わって家に帰ると、高校時代の友人の琴美から連絡が入る。
「鞠花、お願いがあるんだけど」
「なに?」
琴美とは年が明けてから二度ほど会っている。お姉ちゃんの結婚式が無事に終わったことと、速水副社長に告白して失恋したことはすでに報告済み。
改まってどうしたんだろう……。
琴美の話に耳を傾ける。
「あのさ、再来週の金曜日に合コンがあるんだけど、鞠花、都合つかない?」
ブライダルフラワーコーディネーターである私は、結婚披露宴が執り行われる土日と祝日が仕事。金曜日の夜に開かれる合コンに参加したら、次の日の朝早く起きられる自信がない。