恋は理屈じゃない
ブライズルームに戻っても、速水副社長の言葉が頭から離れない。
私って、どこか無防備なところがあるのかな? そういうところがあるのなら直した方がいいよね……。
少しだけ落ち込みながらため息をついた。その時、部屋のドアがノックされる。
「はい」
女性スタッフがドアを開ける。その先には、白いタキシード姿のままの速水副社長が立っていた。
「少しいいか?」
「はい」
速水副社長がブライズルームに入ってくる。その後に笠原さんが続いた。
「須藤さん、今日は本当にありがとう」
「い、いいえ」
さっき別れたときは難しい顔をしていたくせに、今は従業員の手前、爽やかな笑顔を見せている。そんな速水副社長が少し憎らしい。
「これは今回のお礼だ。たいしたものではないが、受け取ってくれ」
「えっ、そんな……」
まさか速水副社長が、お礼の品を用意してくれたなんて……。
速水副社長を憎らしいと思った気持ちが一瞬のうちに消え去る私は単純だ。
「遠慮することはない。実をいうと須藤さんがなにを好きなのかわからなくてな。だから、ホテルの菓子ギフトをたくさん用意した」
速水副社長の後ろに控えていた笠原さんから、袋を手渡される。その袋は片手では持ちきれないほど重かった。