恋は理屈じゃない

姉妹水入らずのひと時


赤ちゃんが産まれたのは水曜日の夜。次の日の木曜日も仕事を終わらせると、一目散に病院に向かった。

母子同室になり、間近で見る赤ちゃんの姿は無垢で癒される。

「鞠花ちゃん、抱いてみる?」

「えっ、いいの?」

「もちろん」

手を消毒するとイスに座り、お姉ちゃんの手から赤ちゃんを受け取る。

「うわぁ、小さい!」

赤ちゃんが小さいのはわかりきったことなのに、いざ抱いてみると改めてその儚さを実感した。

初めての経験にオロオロする私を見たお姉ちゃんは、クスクスと笑いながら赤ちゃんに話しかける。

「ほら、撫子(なでしこ)。鞠花おばちゃんですよ」

お姉ちゃんとお義兄さんが愛しい我が子につけた名前は、撫子。大和撫子という言葉のように、清楚で美しくあってほしい。そんな願いを込めたと、ふたりから聞いた。

「おばちゃんはやめて。撫子ちゃん、私のことは鞠花お姉ちゃんって呼んでね」

少しだけ抱っこに慣れてきた私は、撫子ちゃんの柔らかい頬を人差し指でそっと突く。

「撫子も気をつかわなければならないなんて大変ね」

出産した途端、お姉ちゃんの神経が図太くなったような気がするのは私の考えすぎかな?

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