恋は理屈じゃない
なんとなく腑に落ちない気持ちを抱えつつ、ベビーベッドに撫子ちゃんを乗せた。
「あーあ。明日、撫子ちゃんに会えないなんて寂しいな」
明日は金曜日。琴美に参加すると約束をした合コンが開催される日だ。
「明日なにか用事があるの?」
なにも知らないお姉ちゃんが首を傾げる。
「実は合コンなの」
「合コン?」
「うん。琴美に誘われたんだ」
ベビーベッドの中で大人しくしている撫子ちゃんの様子を見つめながら、明日の予定を説明した。するとお姉ちゃんの表情が曇り出す。
「へえ、そうなの。鞠花ちゃんが合コンね……。鞠花ちゃんは速水さんのことが好きだと思っていたけど、違うの?」
突然、速水副社長の名前が飛び出し、慌てふためく。
「えっ! ど、どうしてそう思うの?」
「私は鞠花ちゃんの姉よ。鞠花ちゃんを見ていれば、そんなことすぐにわかるわ」
お姉ちゃんは笠原さんと速水副社長の間で揺れ動き、その挙句にデキ婚をした。そんな五つ年上のお姉ちゃんのことを、私はどこか頼りなく感じ、自分が彼女を支えるんだと、つい最近まで思っていた。
しかし母になったお姉ちゃんは、強く逞しく美しい。
人としてひと回り大きく成長したお姉ちゃんに、隠し事をしても無駄かもしれない……。