恋は理屈じゃない
そう思った私は、今まで内緒にしていたことを打ち明けた。
「実はね……私、副社長にフラれたの」
「えっ、嘘……」
お姉ちゃんは口もとに手をあてて驚く。
「嘘じゃないよ。副社長お見合いして、その人と結婚するんだって。だから私は明日の合コンでいい人見つけて結婚して、撫子ちゃんみたいなかわいい赤ちゃんを産むんだ」
「鞠花ちゃん……」
姉妹水入らずのひと時を過ごしていると、面会時間が終わる午後八時になってしまった。
「じゃあ帰るね。撫子ちゃん、またね」
最後にもう一度、愛しい姪っ子の頬に触れる。
「鞠花ちゃん、気をつけてね」
「うん」
名残惜しく思いつつ、お姉ちゃんと撫子ちゃんに別れを告げると病室を後にしようとした。するとお姉ちゃんに呼び止められる。
「あっ、鞠花ちゃん!」
「なに?」
「ちなみに、どこのお店で合コンするの?」
そんなことを聞いて、どうするんだろう……。
そう思いつつも、別に内緒にする必要などないため質問に答えた。
「光が丘のグラナダってお店だよ」
「そう。光が丘のグラナダね。それじゃあ、気をつけて帰ってね」
「うん。じゃあね」
手を振るお姉ちゃんに見送られながら、今度こそ本当に病室を後にした。