恋は理屈じゃない

このまま琴美とふたりきりでお酒を飲むだけでも、きっと楽しい夜になる……。

親友と呼べる琴美の存在をうれしく思いながら足を進めていると、目的地であるダイニングバー・グラナダに到着した。

バーテンダーがシェイカーを振るカウンターの前を通り、案内された個室に入る。オレンジ色の間接照明が柔らかい明かりを灯す中、琴美と共に席に着いた。

開始時刻の七時まではあと二十分もあるため、メンバーは私たち以外まだ誰も来ていない。

個室にひとりで待たされたら、きっと心細かったよね。琴美とバッタリ会って、よかった……。

ホッと胸をなで下ろす。

「琴美、素敵なお店だね。お料理も期待できそう」

琴美からメールで届いたお店の情報には、新鮮な魚介類をふんだんに使用したパエリアが自慢だと書いてあった。

なんだかお腹空いてきたかも……。

料理を気にしていると、琴美が大きな声をあげる。

「ちょっと、鞠花! 今日の目的を忘れてないでしょうね!」

大きな瞳をつり上げる琴美は迫力満点。

「きょ、今日の目的は素敵な彼氏をゲットすることです」

「よろしい。鞠花、明日仕事休みでしょ? お持ち帰りされる覚悟で挑みなさいよ」

「お、お持ち帰りって……」

新しい恋はしたいけれど、今日出会ったばかりの人とそんな関係になるなんて考えられない。

もっとゆっくりとお互いのことを知り合って、この人になら……。そう思える相手じゃないと、身も心も安心してゆだねられないと思うんだけどな。

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