恋は理屈じゃない
あ、そうだ。私、速水副社長のことを『大切な人』って、言っちゃったんだよね……。
「副社長、すみませんでした」
「なんで謝る?」
「だって……」
まだ速水副社長のことが好きだと遠回しに言ってしまったような気がして、恥ずかしさのあまり思わず口ごもってしまった。
「鞠花ちゃんは隙があり過ぎだ。俺がこなかったからどうなっていた?」
ついさっきは困っている私の前に颯爽と現れ、助けてくれたのに……。
今は身体の前で腕を組み、責めるようなことを言い出す速水副社長の言動が気に障る。
「助けてくれたことには感謝しています。ありがとうございました。でも、なんで副社長がここに?」
お姉ちゃんの結婚式以来、速水副社長とは会話もメールも交わしていない。それなのに私がここにいるとわかったのは、どうして?
一番の疑問点を尋ねると、速水副社長の顔つきが真面目なものに変化した。
「話がある」
「話?」
電話やメールじゃなくて、直接会って話さなければならないことってなんだろう……。
緊張しつつ速水副社長を見つめる。
「こんな騒がしい場所じゃなくて、移動してふたりきりで静かに話がしたい」
「でも……」
まだ合コンは続いている。途中で抜け出したりしたら、私を誘った琴美の顔に泥を塗ってしまうかもしれない……。
すぐに返事ができずにいると、背後から声をかけられた。