恋は理屈じゃない
恋は理屈じゃない
高速道路をおりてから数分。速水副社長はコインパーキングに車を停めるとエンジンを切った。
「この先に展望台がある」
「そうなんですか」
「ああ。行ってみよう」
「はい」
車から降りると、横浜ベイブリッジを見上げながら足を進める。ほどなくして到着した展望台からは、横浜のウォーターフロントの景色が一望できた。
「綺麗……」
ただでさえ素敵な夜景が、速水副社長と一緒だと数倍も美しく見えるから不思議……。
幻想的な景色にうっとりとしていると、展望台の柵を握っている私の手に速水副社長の大きな手が重なった。
「寒くないか?」
不意に速水副社長の体温を感じ、鼓動がトクンと跳ね上がる。
「だ、大丈夫です」
「そうか」
「はい」
寒くないと言っているのに、速水副社長の手はいつまで経っても離れない。それどころか、私の手を握る力がさらに強くなった。
戸惑いながら速水副社長の顔を見上げると視線が合う。
「鞠花ちゃんは合コンのメガネ野郎に俺のことを大切な人と言ったが、それは今でも俺のことを好きでいてくれていると解釈していいんだよな?」
「そ、それは……」
たしかに私は今でも速水副社長のことが好き……。
けれど面と向かって聞かれると、恥ずかしくて言葉に詰まってしまった。
もう一度、速水副社長に好きだと告白する? でも同じ人に二度も失恋するなんて、絶対に嫌だ。
なにも言えずに黙ったままうつむくと、速水副社長の手が顎に触れて顔が上向く。