恋は理屈じゃない
「どうやら俺たちは、ゴチャゴチャと考えすぎたようだ」
「そうですね」
「恋は理屈じゃないな」
「はい」
お互いの瞳を見つめると、クスクスと笑い合った。けれど、今まで笑みを浮かべていた速水副社長の表情が真面目なものへと変化する。
「今後どんなことが起きても、鞠花ちゃんは俺が守る。だから……俺の彼女になってくれないか?」
副社長の真摯な言葉を聞き、喜びが胸いっぱいに広がっていく。
「はい。よろしくお願いします」
興奮が冷めやらないまま震える声で返事をすると、速水副社長の手が頬に触れた。
「鞠花……」
速水副社長の顔がゆっくりと近づいてくる。
ここは横浜の景色を楽しむことができる展望台。周りには人がいるし、話に夢中で夜景だってまだ充分に堪能していない。
けれど、そんなことはどうでもいい。私の気持ちは速水副社長と一緒……。
キスを受け入れるために瞳を閉じると、ふたつの唇が隙間なく重なり合った。速水副社長の唇は、甘く優しく私にまとわりついて離れない。
このままじゃ、私……。
身体の力が徐々に抜けていき、すがるように速水副社長のジャケットをギュッと握りしめた。すると彼が唇を離す。
「もう、降参か?」
ついさっきまで重なっていた速水副社長の唇が、意地悪くニヤリと上がった。
きっと彼は私の反応を楽しんでいる……。
「ぜ、全然余裕ですからっ!」
思いっきり強がってみせると、彼の腕が腰に回った。