恋は理屈じゃない
今夜は寝かせない
速水副社長が運転する車は横浜ベイブリッジを後方にして、一般道を走り抜ける。横浜港をぐるりと回り、展望台から見えたみなとみらい地区に到着した。
速水副社長は私でも知っている有名ホテルの正面玄関前に、車を停める。駐車場スタッフに車を引き渡すと、ホテルのフロントに向かった。
「チェックインしてくる」
「はい」
さすが、グランディオグループの副社長。手慣れているよね……。
変なところに感心していると、速水副社長があっという間に私のもとに戻ってきた。
「こっちだ」
「はい」
速水副社長に手を引かれてエレベーターに乗り込む。彼は迷うことなく最上階のボタンを押した。
突然、速水副社長と一夜を共に過ごすことになり、鼓動が早鐘を打つ。
もしかして私、大胆だったかもしれない……。
今頃になって自分の言動に不安を感じていると、速水副社長が私の顔を覗き込んできた。
「さっきはゆっくりと夜景を見られなかったからな。今度は部屋から夜景を楽しもう」
「はい」
速水副社長の優しい気配りがうれしい。早急に身体を求められると身構えていた私の肩の力が、スッと抜けていった。
「やっと笑ったな」
「えっ?」
「ホテルに到着してから、ずっと泣き出しそうな顔をしていた」
「そ、そうですか?」
私の様子をよく見ている速水副社長に驚く。
「帰したくないと言ったのは本音だが、事を急ぐつもりはないんだ。今日は夜景を見ながら、たくさん話をしよう」
「はい」