恋は理屈じゃない

「ううん。さっき来たばかり。圭太はなに飲む?」

「俺は……とりあえずいいや」

「そう?」

「ああ」

向かいの席に圭太が座る。

「圭太、仕事忙しい?」

「ああ。まだ覚えることが多くて毎日必死」

「そうなんだ。大変だね」

「まあな」

圭太の会社は土日と祝日が休み。一方の私は、結婚式が執り行われる土日と祝日は必ず仕事。最近はゆっくり会うどころか通話もメールも回数が減り、寂しく思っていた。だから、久しぶりに圭太と会えたことがうれしくて、テンションが上がる。

「ねえ、圭太。この前送った画像見てくれた?」

私のウエディングドレス姿の感想は、まだ聞いていない。

圭太はどんな風に褒めてくれるの?

ニヤニヤしながら圭太を見つめると、彼が眉をひそめた。

「鞠花、俺に結婚を迫ってんの?」

どうして突然『結婚』というワードが出るの?

意味がわからない。

「そんなつもりで画像を送ったんじゃないから」

勘違いしている圭太に向かって、慌てて説明をした。それでも圭太の表情は明るくならない。

「実は今日、鞠花を呼び出したのは、大事な話をするためなんだ」

「大事な話?」

圭太の顔が徐々にうつむく。

「鞠花、俺と別れてほしい」

「えっ?」

突然の展開に驚き、信じられない気持ちで向かいの席の圭太をじっと見つめた。

「鞠花とは休みも合わないし、最近はすれ違ってばかりだったろ。こんなんで俺たち、付き合っているって言えないと思って……」

圭太の声が、次第に小さくなっていく。

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